第二回
イザベル・ユペール×『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』/永遠に解けない謎のような女
みなさんこんばんは。今年2014年度も多くの傑作、力作、珍作映画に出会えることを願っています。特に作品を通して素晴らしい女優さんたちとの新たな出会いが楽しみでなりません。そんな世界の名だたる女優から女のあれこれを学んでしまおうというざっくばらんとしたこのコーナー。
久しぶりの更新となりました第2回目は、フランスの名女優、イザベル・ユペールにスポッットを当ててみたいと思います。実に幅広い役でいつも魅了してくれる彼女ですが、みなさま、どんなイメージをお持ちでしょうか。現在御年60歳ということですが、今年も5月には最新作が日本でも公開される模様。娘の裸体を撮影した写真集「エヴァ」を題材にした実話に基づく映画で、母であり女流写真家の役を演じたようです。幼くも美しい娘と母親というテーマで年ありなおかつイザベル・ユペールときたら観ないわけにはいきませんね。今から非常に楽しみです。記憶に新しいところでは昨年公開となった『愛、アムール』(ミヒャエル・ハネケ監督/2012年)や『眠れる美女』(マルコ・ベロッキオ監督/2012年)でも知的かつしなやかな女性を演じました。少し遡りますが『ジョルジュ・バタイユ ママン』(クリストフ・オノレ監督/200年)では息子と近親相姦関係にある母親の役を、ルイ・ガレルを息子役に色気のあるとんだ熟女を熱演。初めてこの作品を観た時には、あまりのぶっ飛び具合が似合うことに驚き、ハイな気分に酔しれたものです。バタイユが原作なので題材が題材ということもありますが、逆に言えば彼女以外の女優であの役を演じられる人はそうそうにいないのではないかということです。うーん、思いつかない。ちょっと奇抜で悪い女が似合うイザベル。というとすごく派手な感じがしてしまうのですが、お顔立ちも決して派手な方ではありません。地味なのにすごく派手に見えるし、どんなに下品な台詞を言ってもバカには見えないというか、すごく冷めた目をしているというか、なんというかいつも本心をついつい探ってみたくなるような女性だということなのです。もちろん映画の中はお芝居ですから台本があって台詞があるわけなのですが、役者が言っている台詞=その役柄の本心ではありません。本心しか言わないなんて会話としてはつまらないものだったりします。素晴らしい映画の脚本は説明ではなく、裏にある本心を想像させるようなものかもしれません。
さて、『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』(クロード・シャブロル監督/1995年)という作品。この作品でセザール賞最優秀女優賞とヴェネツィア国際映画祭女優賞(他にサンドリーヌ・ボネールも同時受賞)をとりました。作品自体もロサンゼルス映画批評家協会賞を獲得しています。ロウフィールド家で使用人を務める女性ソフィーはディスクレシア(識字障害)であることが明るみなったことをで、日々の不満を爆発させ友人の郵便局員とともに一家を惨殺するというストーリーなのですが、この郵便局員のジャンヌを演じたのがイザベル・ユペールなのです。なんというかとっても性格の悪ーい嫌な女の役で、もともと一家からも好かれていません。ソフィーとも仲良しというよりは、強引にロウフィールド家に潜り込む口実として利用しているだけというか、ひとのことなんかまるで考えちゃいない。観ていて本当に苛々してしまいましたが、見終わった後で一番印象に残るのはなんといっても彼女。身勝手で本当にずうずうしい。分かり易くコンプレックスを抱えたソフィーとは違って、得体の知れない底意地の悪さをもったジャンヌの意地悪さはまるでウイルスのような感染性があるようです。一家惨殺というかたちでソフィーの方は物語中コンプレックスに対する憂さが晴れても、ジャンヌの理由なき悪意と抱え込んだコンプレックスは残ってしまうようです。やっぱり印象に残るとついつい考えてしまいます。結局のところジャンヌの本心なんて何もわからない。物語はジャンヌの生活にフューチャーされているわけではないにも関わらず、彼女の本心をついつい覗いてみたいと思った人は案外多いのではないでしょうか。具体的な悪意とは違って、抽象的な悪意にこそ魅力(魔力)が潜んでいるのかもしれません。永遠に解けない謎のような女、それがイザベル・ユペールという女優なのではないでしょうか。




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